戸塚刺しゅう協会

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2023.08.23

ひとはり日記 2023.8.23

私の母は「五黄の寅」の生まれでございます。

私から見ると母はかなり気丈な人のように思えますので、さすがだねと申しますと、

自分の母親の手には「ますかけ線」があったけれどもどうということはなかった、そういうものよ。とやり返されます。

 

経済的に自立できる生き方をするようにと父親に言われ、専門学校を出てすぐに住み込みで和裁の仕立を習いにでました。

自分で仕立ての仕事を取って一人で生きていけるように整えて間もなく、

自営業・母子家庭の家に嫁ぎ、その中で一所懸命に働き生きてきた母は十分すぎるほどに強い女性だと思います。

 

母という人は、

箱根駅伝で早稲田が負けそうになれば凄まじく不機嫌になり(時には暴言を吐き)、

おかしな日本語をテレビで聞くと、聞き流すことができずに嫌な顔をし、

お塔婆の字が下手だと感じれば、お盆の間中不平を言い、

プレパトの夏井先生と、お亡くなりになりましたが中村吉右衛門さんが好きで、

父と揉めながらも、彼が天ぷらが食べたいと言えば暑い盛りでも不平を言わずに天ぷらを揚げてやり、

兄たちにお弁当が必要だったときは、一人暮らしをしているその友達の分まで作って持たせるといったような、

 

私には、到底たどり着けそうもない心にしっかりとした温度を持った女性です。

 

そんな母は暑い夏が嫌いです。

私の頭が痛くなるほどに冷房の効いた部屋に入るとホッとしております。

今年も猛暑ですから大丈夫だろうかと気にしておりましたところ、あろうことか寝室の冷房が故障したというのです。

すぐに発注をかけても2週間ほどは待たなければならないと言われたらしく、

寝室で休むことを諦め、母は仕事場で寝起きしておりました。

冷房が壊れた慰労と母の誕生日祝いを兼ねて娘とランチに誘いました。

娘が母を誘いたいと言ってくれたお店は、西木屋町にあるパスタ屋さんでした。

いつも行列ができていて、待つ場所には日よけもありません。

どうしたものかなと思ったのですが、母はたいそう喜んでくれたので母と娘と兄と私の4人で行ってきました。

パスタを堪能した後、鍵善を覗いてみようかということになり足をのばしました。

こちらの「琥珀」が娘の好物なのだと言うと、

「私は、はす向かいの松葉屋の松露が好きなのよ、覚えておくように」と言われました。

 

覚えておこうと思います。

 

娘が一つ年を重ねて成長すれば、母は一つ年を負うのだなと感じます。

暑い時期に母に会うと強くそれを感じます。

母方の祖母は洋裁も編み物も刺繍も好きな人で、いろいろな本を持っており、その縁で戸塚刺しゅうを教えてくれたのは母でした。

ですので、母と展示会に行くと祖母の話になります。懐かしそうにしています。

そんな母に今年も戸塚刺しゅうカレンダーを送ろうと思います。

来週から順次「ひとはり通信52号」が発送されます。

様々な刺繍材料やキットともに、来年のカレンダー・手帳のご案内もございます。

ゆっくりとご覧いただけましたら幸いです。

 

2024年戸塚刺しゅうカレンダー


花の刺しゅう絵 いのちあるものからの贈り物

 

 

2024年花の手帳 Design by 星燈社