2023.09.20
ひとはり日記 戸塚家の猫の話vol.2
では前回の続きで結婚当初の猫との出会いをお話しいたします。
その頃に住んでいたのはドラマで有名になってしまった世田谷代田。その当時は普通しか止まらないローカルで静かな駅でした。
そこから5分も歩けば辿り着くマンションの202に私達、下の102に夫の弟が住んでおりました。
動物好きの弟がある日、子猫を拾ってきて一緒に住み始めました。
暫くしたころ「少し預かって」と弟に言われ、半日程預かりその子は彼の部屋に帰っていきました。
その次の日、なんとキッチンの少し開けていた窓からその子が飛び込んできたのです。
ここは2階、どういうこと???と思い外に出て確かめてみると、
1階にある給水タンクをつたって我が家にたどり着いたようでした。
それからはこのルートが彼女の縄張りになりました。
日参するようになり、そうしてとうとう我が家の子となりました。
この子の名前が「にゃ〜」。印象深い子でした。
ある日、夫も家にいる休みの日にアイロンをかけておりますと、彼女がいつものように窓から帰ってきました。
ところが、口元に何か異物が…。
なんと、ネズミを咥えてのご帰還でございました。
思わずギャー😱と叫んで裸足でドアから外に飛び出しました。
一生懸命に気持ちを落ち着かせてみればアイロンが途中だったことに思い至り、
恐る恐るドアを開けました。
ネズミの方は夫がなんとかしてくれましたが、夫のカッターシャツの背には見事なアイロンの形の模様ができました。
冷静になって考えてみれば彼女はプレゼントをくれたのだろう、褒めて欲しくて持ってきたのだろうと思います。
この後も贈り物は続きました。さすがに家の中には持ち込まず、マンションのロビーや入口など私が必ず気づく場所に置いてくれていました。
彼女なりの配慮だったようです。
「ありがとう!えらいね〜!」と褒める言葉も出るようになり、
専用の箒と塵取りで片付けられるようにもなり、
私も成長させていただきました。
暫くすると、彼女はご近所でも有名な猫となりました。
顔見知りの方から「お宅の猫、この前カラスと戦っていたわよ。この辺りのボスよね。」と報告を頂いたり、
私の買い物にいつも一緒についてきて、人混みに入る手前の草むらで私が戻るのをじっと待っている姿も知られていました。
そして落ち込んだ時に優しく慰めてくれる私の最良のパートナーでした。
この後も脈々と家族は増えていきましたが、彼女ほど人間臭く思い出深い子はおらず、今でも思い出すと目頭を熱くさせる私の一部です。